スーパーの婦人服売り場を見ると、夏物はセール品になっている。
朝晩肌寒いと感じる今、もう秋ですよね。
母と月に何度か行くカフェ。
ジャリンジャリンと鳴るすずが、ドアに
付いていただろうな…と想わせるような昭和の懐かしさを感じる。
お店に着くなり女性店員がこちらへと席に案内してくれた。
店内は煎れたての珈琲のいい香りでいっぱい。
母は珈琲好きだが、決まって注文するのはブレンド。家に至ってもゴールドブレンドオンリーな人なのだ。
「たまにはさぁ〜違うの飲んでみたら?」と提案してみると
「そうやねぇ」と同意してくれた。
メニューには、ブルーマウンテンを筆頭にキリマンジャロ、エチオピア、コロンビア、ガテマラなど何種類か書かれているものの、なかなか決められない。
「どれにする?」の問いに
「うーーんどれがいい?」
「いやいやお母さん飲むねんで」
「そらそうやけどわからへんわぁ」
豆の種類にはコクや酸味が段階別に黒まるで表示してあったので
「コク?それとも酸味?」と聞くと、返ってきた答えが
「うーん真ん中」
「えー真ん中ってなに?」
真ん中と言われても…悩んだあげく選んだのはエチオピア、名前だけで決めたようなものだ。私はというと、いつもカフェオレ。その間にも後から後から、珈琲の香りに引きよせられるかのように、お客は入ってきては皆注文を終えている。近くにきたら声を掛けようと思っても店員は…というと忙しく動き回っているせいかそれもしづらい。母と私のところには一向に注文を聞きに来てくれなかった。
「来ないね」そういうと母はいきなり大きな声で
「ちょっとーすみません」
その一言におもわず周りをキョロキョロ見てしまった、自分の中で、その言動が恥ずかしく思えてしまっての行動だったと思う。でも母のその一言がなければ、店員はしばらく気付かなかったかもしれないし…と思うと感謝の気持ちの方が大きかった。
周りをみても、他のお客はそれぞれの会話に話がはずんでいるのか気にしてる人はいない。
(なぁ〜んだそんなもんか)
注文を終え。エチオピアを待つ間、たわいもない会話、昔話、父親が生きていた頃はグチばっかだった母も最近はほとんど言わなくなった。一人になった今、バカみたいな会話ができるのは私ぐらいなものかな。機関銃のように話すのを聞いてると、疲れる時もたまにある。私が話をしてる時もほとんど聞いていないし、そういう態度を見るとちょっとイラッとしたりする。似てるなぁ〜やっぱこの親に育てられたのだから似ている。友人がイラッとするのもわかるな。
なぁんて思ってると、エチオピアが母の元に置かれた
「早っ」思わずでた言葉、周りを見ると先に注文していたお客の前にはまだ珈琲が置かれていない。母が私に顔を近づけ
「間違ってるんちゃうの?」
「飲まな間違いとかわからんやんな」
「そやねぇ」そういいながら母はエチオピアを口にはこんだ。
「はい、もう間違いでも飲まなあかんで」私がいうと
母はなにも言わない、うなづくでもなく、首を傾げるでもなく、無言ということはどっちなんだろ、お店の人に聞こえるとまずいからなのか、まぁいいか。
それから一時間後に店を出、ふとんのシーツを買うとかで車を走らせた。
「やっぱブレンドやわ」
「やっぱまちごうてたん?」
「ちがう、おいしいんやけどまずい。酸味が苦手やわ」
「どっちやねん」
母の口には合わなかったらしい
「またいろんなん飲んでみたいわー」
「せやね」
世界でも有名といわれるエチオピア珈琲
次は私が味わってみたい。